さつまいも栽培で、つるばかりが茂って「これってつるぼけ?」と不安になっていませんか。葉や茎が元気すぎる時の見分け方や、適切な対策を知りたい方も多いでしょう。特に、伸びたつるを切るべきか迷うところですが、実は栽培中のつる切りはイモの成長に重大な影響を与えます。
さつまいもが順調に育っていると思いきや、つるだけがジャングルのように生い茂り、肝心の収穫でイモが小さかったり少なかったりするのは、家庭菜園でよくある失敗の一つです。この原因の多くは、つるの管理方法にあります。
この記事では、イモに養分を集中させる伝統的な知恵である「つる返し」の正しいやり方、つる返し時期やマルチ栽培などで不要になるケース、さらに収穫を格段に楽にする正しいつる切り方法まで、さつまいもの「つる管理」に関する疑問を徹底的に解説します。
- 「つるぼけ」の原因と見分け方
- 「つる返し」の正しい手順とタイミング
- 栽培中に「つる切り」をしてはいけない理由
- 収穫前に行う「つる切り」の効果と方法
さつまいものつるぼけを防ぐつる返しとつる切りの基本
そもそも「つるぼけ」とは何か

さつまいも栽培における「つるぼけ(蔓惚け)」とは、土の中のイモ(塊根)が大きくならず、地上部の葉や茎(つる)ばかりが過剰に茂ってしまう現象を指します。
さつまいもは、葉の光合成で作られた養分(デンプン)をつるを通して根に送り、蓄積することでイモが太ります。しかし、つるぼけの状態になると、その貴重な養分がイモの肥大ではなく、葉を大きくしたり、茎を伸ばしたりするために優先的に使われてしまいます。
結果として、見た目は青々として立派なのに、収穫の時期を迎えて掘り起こしてみると、期待していた大きさのイモができておらず、小さかったり、数が極端に少なかったりといった残念な結果につながるのです。
つるぼけのチェックサイン
以下の特徴が顕著に見られる場合、つるぼけを疑う必要があります。
- 葉の色:通常よりも濃い、深い緑色をしている(窒素過多の兆候)
- 葉のサイズ:品種にもよりますが、手のひらを大きく超えるほど巨大化している
- 茎(つる):通常よりも不自然に太く、節と節の間(節間)が長く伸びている
これらのサインが見られたら、イモが太っていない可能性を考慮し、早めに対処する必要があります。
つるぼけで切るのはNG!その対策と見分け方

つるぼけの症状が見られた際、茂りすぎた邪魔なつるを「切る」ことでスッキリさせ、養分がイモに行くだろうと考えるかもしれませんが、それは原則としてNG行為です。
なぜなら、さつまいもは葉の光合成によってイモを太らせる養分を作っています。葉やつるを切ることは、養分を生み出す「工場」を自ら取り壊すようなもので、結果的につるぼけを助長し、イモの肥大をさらに妨げることになりかねません。
栽培中の「つる切り」はNG
つるぼけの対策として、あるいは「邪魔だから」という理由で安易につるを切ってしまうと、収穫量やイモのサイズに深刻な悪影響が出る可能性が非常に高いです。つるぼけの正しい対処法は「切る」ことではなく、後述する「つる返し」が基本となります。
つるぼけの見分け方としては、前述のサイン(葉の色や大きさ)に加え、その「原因」に注目することが重要です。主な原因は大きく分けて2つあります。
原因1:窒素肥料(チッソ分)が多すぎる
窒素は「葉肥え」とも呼ばれ、葉や茎の成長を強力に促す成分です。さつまいもは比較的やせた土地でも育つ作物であり、肥料(特に窒素)が多すぎると、つるぼけを真っ先に引き起こします。
- 前作で葉物野菜(ホウレンソウ、コマツナなど)を育てており、肥料が多く残っている。
- 元肥として窒素成分の多い鶏ふんや化学肥料を入れすぎた。
- 良かれと思って追肥をしてしまった。
JA(農業協同組合)などの指導でも、さつまいも栽培では窒素肥料を控えることが推奨されています。土づくりの段階が非常に重要です。(参考:JAグループ「サツマイモの育て方・栽培方法」)
原因2:不定根(ふていこん)が張っている
さつまいものつるは非常に生命力が強く、伸びたつるの節々が地面に接すると、そこから「不定根」という新しい根を簡単に出します。この不定根が土の中に張ってしまうと、その根が独自に土中の養分(特に窒素)や水分を吸収し始めます。
これにより、本来株元(最初に植えた苗の場所)に集中すべき養分が、あちこちに分散してしまいます。これがつるぼけをさらに悪化させる要因となるのです。
これらの原因に対する適切な対策こそが、つるぼけを防ぎ、秋に大きなイモを収穫するための鍵となります。
不定根を処理する「つる返し」とは

「つる返し」とは、さつまいも栽培の中期に行われる伝統的かつ重要な管理作業です。これは、畝(うね)からはみ出して伸びたつるを持ち上げて、地面に張り付こうとする「不定根」を物理的に引きはがし、養分の分散を防ぐために行います。
前述の通り、つるの節から出た不定根が地面にしっかりと根付くと、そこからも養分を吸収し始めます。ひどい場合には、その不定根の先に「つる根イモ」と呼ばれる小さなイモができてしまうことさえあります。
こうなると、株元のイモに送られるはずだった貴重な養分が、これらの小さなイモに横取りされてしまいます。結果、株元のイモは太ることができず、収穫時には小さくて筋っぽい「つる根イモ」ばかり、ということにもなりかねません。
つる返しは、この不定根による養分の横取りを阻止し、すべての養分を株元のイモだけに集中させるための作業なのです。窒素過多が原因のつるぼけ対策としても、非常に効果的な方法の一つと言えます。
つる返しの具体的なやり方と手順

つる返しのやり方は非常にシンプルですが、イモの成長を左右する重要な作業です。力任せにやると株を傷めるため、丁寧に行いましょう。
以下の手順を参考にしてください。
つる返しの手順(手作業が基本)
- 畝の外に伸びたつるを持ち上げる 畝(うね)からはみ出して通路などにだらりと伸びたつるを、株元に近い方から順に、手で優しく持ち上げます。この時、株元の茎が切れないように注意してください。
- 不定根を引きはがす つるが地面に接していた部分を見ると、白い根(不定根)が土に入り込んでいることがあります。これを(「バリバリ」と音がすることもありますが)ためらわずに引きはがします。
- つるを畝の上に戻す 持ち上げた(ひっくり返した)つるを、畝の上に乗せるように折り返します。葉が裏返しになることもありますが問題ありません。これにより、不定根が再び地面に接するのを防ぎます。
この作業を、つるが伸びてくるたびに繰り返します。特に、雨が降った後などは土が湿って不定根が非常に張りやすくなるため、こまめに畑の様子をチェックし、根が深く張る前に対処するのが理想です。
つる返し時期と不要になるケース

つる返しを行うべき時期は、植え付けから1ヶ月半~2ヶ月が経過し、つるが本格的に伸び始める梅雨時~夏場(7月~8月頃)が最適な目安です。
つるは生育中ずっと伸び続けるため、つる返しは一度やったら終わりではありません。つるの伸び具合を見ながら、収穫までに2~3回程度行うのが一般的です。
作業時期の注意点
イモが本格的に肥大し始める9月中旬以降は、あまり積極的につる返しをしない方が良いとされています。この時期に株全体に強いストレスを与えると、イモの肥大に悪影響が出る可能性もあるため、つるが伸び始めたら早め早めに対処するのがおすすめです。
「つる返し」は、さつまいも栽培の伝統的な作業ですが、近年の栽培方法や品種改良によって、実は不要になるケースも増えています。
つる返しが不要になる主なケース
- マルチ栽培(黒マルチなど) 畑に黒いビニールシート(マルチ)を張って栽培している場合、マルチが物理的につるの節と地面が接するのを防いでくれます。これにより、不定根が張る場所がないため、マルチ栽培では、つる返し作業は原則として不要です。 ただし、マルチの外(通路など)にはみ出たつるが地面に接した場合は、その部分だけつる返しを行う必要があります。
- つるの伸長が短い品種 近年の品種改良により、「べニアズマ」や「べにはるか」の一部など、従来品種に比べてつるの伸びがコンパクトな品種も出てきています。こうした品種は不定根も出にくいため、つる返しの労力が軽減されるか、不要な場合があります。
つる返し作業の注意点とコツ

つる返しを効果的に行うためには、いくつか注意点があります。最も重要なのは、「つる自体は切らない」ということです。
あくまで目的は不定根を引きはがすことであり、光合成を行う葉やつるを切断することではありません。もし鎌などを使って作業すると、誤ってつる本体を切断してしまう危険性があるため、必ず手作業で行うのが基本です。
つる返しは重労働になりがち
つるがジャングルのように繁茂しきってから一度に作業しようとすると、つるが複雑に絡み合い、蒸し暑い中での作業はかなりの重労働になります。できるだけ、つるが伸びてきたタイミングで「こまめに行う」のが、作業負担を減らし、つるぼけ防止効果を最大化する最大のコツです。
また、作業は晴れた日の日中に行うのがおすすめです。つるが適度に水分を失い、少し柔らかくなっているため、作業中に折れにくいとされています。
さつまいものつる切りとつるぼけ・つる返しの疑問
栽培中につるを切ってはいけない理由

記事の前半でも繰り返し触れましたが、さつまいもの栽培中に「つる切り(剪定)」をしてはいけない理由は、イモを太らせる養分(デンプン)が作れなくなるからです。
さつまいもは、太陽の光を浴びた葉が「光合成」を行うことでデンプンを作り出し、それをつるを通して根(イモ)に送り込んで蓄積させ、大きく成長します。この仕組みは、植物にとって最も根幹となるエネルギー生産活動です。
つるや葉を切るという行為は、この「養分を作る工場」を自ら減らしてしまうことに他なりません。葉が減れば光合成の総量が減り、結果としてイモに送られる養分も減ってしまいます。つるぼけ対策のつもりで切ったのに、逆にイモが全く太らなくなる、という最悪の事態を招きかねません。
「そうは言っても、つるが伸びすぎて通路が通れない…」「隣の畑に侵入して迷惑がかかってしまう…」など、管理上どうしても切らざるを得ない場合もありますよね。
そのようなやむを得ない場合に限り、切る場所と量に細心の注意が必要です。株元からバッサリと切るのではなく、伸びすぎた「つるの先端」を「最小限」だけ切り詰める程度にとどめましょう。あくまで応急処置であり、株へのダメージを最小限に抑えることが重要です。
収穫前に実践する正しいつる切り方法

栽培中のつる切りは原則NGですが、「収穫直前」に行う「つる切り」は、栽培中のつる切りとは目的が全く異なります。これはイモを太らせるためではなく、収穫作業をしやすくするため、そしてイモの品質を高めるために行う重要な作業です。
つるが青々と茂ったままだと、イモが土の中のどの位置にあるか正確に分かりにくく、スコップや鍬(くわ)などでイモを傷つけてしまう原因になります。あらかじめつるを刈り取っておくことで、株の位置が明確になり、収穫作業が格段に楽になります。
収穫前の「つる切り方法」
株元から10cm~20cm程度の長さを残して、鎌や丈夫な園芸バサミなどでつるを刈り取ります。株元ギリギリで切らないのは、収穫時に残した茎を「目印」にすると同時に、イモを引き抜く際の「取っ手」として利用するためです。
つる切りで甘みが増すメカニズム
収穫前のつる切りには、作業性向上のほかに「甘みを増す」効果も期待できると言われています。
これにはいくつかの説がありますが、主なメカニズムとしては、収穫前につるを切ることでイモへの養分供給(水分の移行など)がストップし、イモが一種のストレス状態になることで、デンプンが糖に変わる(糖化)のを促すため、と考えられています。
また、つるを切ってから収穫まで数日間おくことで、イモの切り口(茎と繋がっていた部分)が乾き、土中である程度の「追熟期間」が生まれることも、甘みや保存性の向上に関係しているとされています。
ただし、これは必須作業ではなく、品種や土壌条件によっても効果は異なると言われています。
つる切りに最適なタイミングと時期

収穫前のつる切りを行う最適なタイミングは、収穫予定日の数日~1週間前が目安です。
あまり早く(例えば2週間以上前)切りすぎると、イモがまだ太ろうとしている最終段階の貴重な成長期間を止めてしまう可能性があります。逆に、収穫直前すぎると(当日や前日)、切り口が乾く時間がなく、後述する病気の原因になることも考えられます。
収穫予定日から逆算し、天候なども考慮しながら適切なタイミングで作業しましょう。
「収穫時期」の見分け方
さつまいもの一般的な収穫時期は、植え付けから約120日~140日後(品種によります)が目安です。地域や気候にもよりますが、10月~11月頃が最盛期です。また、地上部の葉が自然に黄色くなり始めたら、イモが十分に太ったサインとされています。
正確な肥大具合を知るためには、株元の一つを「試し掘り」してみるのが最も確実な方法です。
つる切りに適した天気と注意点

収穫前のつる切り作業は、必ず「晴れた日」に行うようにしてください。
雨の日や雨上がりの土が湿った状態でつるを切ると、切り口(特に株元の茎)から病原菌が入りやすくなり、イモが土の中で腐敗する原因となります。特に「つる割病」などの土壌病害は、こうした傷口からの感染が懸念されます。(参照:農研機構「サツマイモつる割病抵抗性品種」)
つるを切った後、数日間は晴天が続く予報の日を選ぶのがベストです。これにより、切り口がしっかりと乾燥し、病原菌の侵入リスクを大幅に減らすことができます。
刈り取ったつるの処分
刈り取った大量のつるや葉は、畑に放置すると病害虫の発生源(温床)になる可能性があります。コンポストなどで堆肥化する場合は問題ありませんが、そうでない場合は畑の外に持ち出して適切に処分しましょう。
さつまいものつるぼけ・つる返し・つる切りのまとめ
- 「つるぼけ」は葉や茎ばかりが茂りイモが太らない現象
- つるぼけの原因は主に窒素肥料の過多
- もう一つの原因は「不定根」による養分の分散
- つるぼけ対策で栽培中につるを切るのはNG
- つるぼけ対策の基本は「つる返し」
- 「つる返し」は不定根を引きはがし養分を集中させる作業
- つる返しはつるが伸び始める梅雨時~夏場に行う
- つる返しは一度ではなく数回に分けて行う
- 黒マルチ栽培ではつる返しは原則不要
- つる返し作業時はつる本体を切らないよう注意する
- 「つる切り」は収穫の数日~1週間前に行う作業
- 収穫前のつる切りは作業効率アップが目的
- つる切りは株元を10~20cm残して切る
- つる切り作業は晴れた日に行う
- さつまいものつる管理が収穫量を左右する

