家庭菜園で人気のじゃがいもですが、植え付けの最適な深さや、植えた後の水やりの頻度について悩んでいませんか?「しっかり芽出しの方法を行ったのに芽が出ない」「畝の作り方や、効率的な2条植えの畝幅がわからない」「マルチを使った方が良いのか?」など、基本的な疑問は尽きません。
この記事では、じゃがいも栽培で失敗しないための植え付けの深さ、水やりの正解を軸に、畑の準備から管理まで網羅的に解説します。
- じゃがいもの植え付けの最適な深さ
- 植え付け直後と生育期の水やりの正解
- 畝の作り方やマルチ栽培の基本
- 芽が出ない時の原因と対策
じゃがいもの植え付け深さと水やりの基本知識
じゃがいも栽培を成功させるには、植え付け前の準備が鍵となります。ここでは、栽培に適した時期から、基本となる畝の作り方、マルチ栽培のコツ、そして失敗を防ぐための芽出しの方法や「芽が出ない」場合の主な原因について、基本的な知識を解説します。
じゃがいもの植え付けに適した時期と準備

じゃがいもの植え付けは、主に「春植え」と「秋植え」の2回チャンスがあります。お住まいの地域の気候に合わせて適切な時期を選ぶことが、成功の第一歩です。
春植えは、2月下旬から4月上旬にかけて、霜の心配がなくなった頃に植え付けます。低温期から生育を始めるため、じっくりと育ち、デンプン価の高いホクホクとした食感のイモ(男爵薯など)が収穫できる傾向にあります。ただし、梅雨時期の過湿や、夏前の高温で生育が止まるリスクも考慮する必要があります。
秋植えは、8月下旬から9月上旬にかけて行います。まだ残暑が厳しい時期に植え付けるため、種イモが腐敗しないよう注意が必要ですが、生育期間が短いため、病害虫の被害を受けにくいメリットがあります。収穫は11月下旬から12月上旬となり、比較的ねっとりとした食感のイモ(メークインなど)に向いています。
| 春植え | 秋植え | |
|---|---|---|
| 植え付け時期 | 2月下旬~4月上旬 | 8月下旬~9月上旬 |
| 収穫時期 | 6月~7月 | 11月下旬~12月上旬 |
| メリット | ・ホクホク系のイモが育ちやすい ・栽培できる品種が多い | ・病害虫のリスクが少ない ・ねっとり系のイモが育ちやすい |
| デメリット | ・梅雨の過湿リスク ・夏場の高温で生育停止 | ・植え付け時の高温で腐敗リスク ・栽培できる品種が限られる |
土壌の準備
植え付けの2週間前までには土づくりを完了させましょう。じゃがいもはpH5.0~6.0の弱酸性の土壌を好みます。アルカリ性に傾くと「そうか病」という病気にかかりやすくなるため、石灰の入れすぎには注意が必要です。(参考:全農:ジャガイモのそうか病に注意)
土づくりの手順(目安) 2週間前: 苦土石灰をまいてよく耕す(入れすぎ注意)。 1週間前: 完熟堆肥と元肥(じゃがいも専用肥料など)をまき、再度よく耕す。
畝の作り方と土づくりのポイント

じゃがいも栽培において、畝(うね)の作り方は収量を左右する非常に重要な作業です。ポイントは「水はけ」と「土寄せのスペース確保」です。
じゃがいもは過湿を極端に嫌います。土がジメジメしていると、植え付けた種イモが腐敗したり、病気にかかったりする原因となります。そのため、必ず畝を立てて、水はけを良くする必要があります。
基本的な1条植え(1列植え)の場合、畝幅は60cm~80cmが目安です。高さは、最初は10cm程度の低い畝にしておきます。これは、後の「土寄せ」作業で、イモが育つスペースに土をかぶせていくためです。最初から畝を高くしすぎると、土寄せする土が脇から十分に確保できなくなるので注意しましょう。
畝作りのポイント
- 水はけ第一: 過湿は腐敗のもと。必ず畝を立てる。
- 畝幅: 1条植えで60cm~80cm。
- 畝の高さ: 最初は10cm程度と低め。土寄せのために脇の土を残しておく。
水はけが特に悪い畑の場合は、最初から畝の高さを15cm~20cm程度と高めにしておき、種イモが水に浸かるのを防ぐ工夫も有効です。
2条植えと畝幅の正しい取り方

限られたスペースで収量を増やしたい場合、2条植え(2列植え)が非常に効率的です。1条植えよりも多くの株を植えられますが、適切な畝幅と株間を確保しないと、風通しが悪くなったり、芋が十分に育たなくなったりします。
2条植えの場合、畝幅は100cm~120cm程度と、1条植えより広く取る必要があります。この広い畝の中に、2列の植え溝を作ります。
重要なのは、列と列の間(条間)と、株と株の間(株間)です。
- 条間(列と列の間): 約30cm~40cm
- 株間(株と株の間): 約30cm
この間隔をしっかり空けることで、葉が茂っても風通しと日当たりが保たれ、病気の予防につながります。また、土寄せ作業のスペースも確保できます。
畝幅120cmと聞くと広く感じますが、中央に2列植えるため、結果的に畑のスペースを効率良く使えます。家庭菜園の限られた場所でも、2条植えは収量アップの強い味方ですよ。
マルチを使った植え付けのコツ

近年、家庭菜園でも「マルチ(黒マルチシート)」を使った栽培が人気です。マルチには多くのメリットがあり、じゃがいも栽培の手間を大幅に減らすことができます。
マルチ栽培のメリット
- 雑草防止: 光を遮断するため、面倒な雑草取り作業がほぼ不要になります。
- 地温・保湿: 地温を安定させ、土の水分蒸発を防ぎます。
- 土寄せ不要: マルチがイモの緑化を防ぐため、栽培で最も大変な作業の一つである「土寄せ」が不要になります。
マルチ栽培のデメリットと注意点
メリットが多い一方、初期コスト(マルチシート代)がかかることや、収穫後にマルチを剥がして処分する手間が発生します。また、真夏日の高温期には、地温が上がりすぎて生育に悪影響が出る可能性もゼロではありません。
マルチ栽培の注意点 マルチ栽培では土寄せができないため、植え付け時にイモが育つスペースをしっかり確保する必要があります。また、芽がマルチを突き破れない場合があるため、芽が持ち上げてきた箇所に穴を開けて芽を出す「芽出し」作業が必要になることがあります。
植え方としては、畝を立てた後、土に溝を掘らずに畝の上に種イモを置き(ゴロゴロ植え)、その上から土を5cmほどかぶせ、さらにマルチを被せる方法も手軽でおすすめです。
芽出しの方法と植え付け前の管理

美味しいじゃがいもを作る戦いは、植え付けの2~3週間前から始まっています。それが「芽出し(浴光催芽:よくこうさいが)」という作業です。
芽出しを行うことで、植え付け後の発芽が揃い、生育がスムーズに進みます。また、丈夫で太い芽を育てることで、病気にも強くなります。
芽出しの具体的な方法
- 時期: 植え付け予定日の2~3週間前。
- 場所: 直射日光が当たらない、明るく風通しの良い室内(窓辺など)。
- 方法: 種イモを箱やトレーに重ならないように並べます。夜間は冷え込みすぎないよう、屋内に取り込むか、布をかけて保温します。
- 完了の目安: 芽が3mm~5mmほどの、緑色で「ずんぐり」とした太い芽になったら準備完了です。白くて細いモヤシのような芽はNGです。
大きな種イモ(1個60g以上)は、芽が出ている部分を均等に残すように切り分けて使います。切った場合は、植え付けの2~3日前に切り、切り口をしっかり乾燥させることが腐敗防止の鍵です。切り口に草木灰(そうもくばい)をまぶしておくと、さらに腐敗を予防する効果が期待できます。
芽が出ない時に考えられる原因

植え付けから2~3週間経っても芽が出てこない時ほど、心配なことはありません。「芽が出ない」場合、主な原因は以下の4つが考えられます。
原因1:種イモが腐敗した(最も多い)
土の中で種イモが腐ってしまうケースです。これが最も多い原因とされています。
腐敗の主な要因 ・植え付け直後の水やり: 畑(地植え)の場合、植え付け直後に水を与えると、土が過湿になり、種イモが呼吸できず腐敗します。 ・土の水はけが悪い: 畝を立てなかったり、粘土質の畑だったりすると、雨が降った後に水が溜まり、腐敗します。 ・種イモの切り口が未乾燥: 切ったイモの切り口を乾かさずに植えると、そこから菌が入って腐ります。
原因2:植え付けが深すぎた
植え付けが深すぎると、芽が地上に出るまでに時間がかかりすぎたり、途中で力尽きてしまうことがあります。また、地中深くは地温が上がりにくいため、発芽が遅れる原因にもなります。
原因3:地温が低すぎた
植え付け時期が早すぎたり、寒の戻りがあったりして、地温が低い(10℃以下)状態が続くと、じゃがいもは発芽のスイッチが入りません。
原因4:芽が損傷した
芽出し(浴光催芽)で育てた大切な芽が、植え付け作業中や土をかぶせる際に折れてしまうと、発芽が遅れたり、そこから芽が出なくなったりすることがあります。
植え付け後の水やりと発芽管理

じゃがいも栽培で最も情報が錯綜し、初心者が混乱するポイントが「植え付け直後の水やり」です。結論から言うと、畑(地植え)とプランター栽培では、答えが真逆になります。
畑(地植え)の場合:原則「水やりは不要」
畑に植える場合、植え付け直後の水やりは原則として行いません。日本の春先の畑は、適度な湿気を含んでいることがほとんどです。
前述の通り、種イモ自体が水分と養分を持っているため、発芽に十分な力があります。ここで水を与えると、土が過湿状態になり、種イモが呼吸できずに腐敗するリスクが非常に高くなります。
例外: 連日晴天が続き、土がカラカラに乾いてホコリが立つような状態の時だけ、植え溝にだけ軽く水(「湿し水」程度)を与えます。
プランター・袋栽培の場合:「たっぷり水やり」
一方、プランター栽培の場合は、植え付け直後に鉢底から水が流れるまで、たっぷり水を与えます。市販の培養土は袋詰めされた時点では乾燥していることがほとんどで、水を与えないと種イモが乾燥して発芽できません。
| 畑(地植え) | プランター・袋栽培 | |
|---|---|---|
| 植え付け直後の水やり | 原則不要(腐敗防止) | たっぷり与える(乾燥防止) |
| 発芽後の水やり | 土の表面が乾ききったら | 土の表面が乾いたら |
発芽するまでは、畑もプランターも追加の水やりは基本的に不要です。発芽後、土の表面が乾いているのを確認してから水やりをするようにしましょう。
じゃがいもの植え付け深さと水やりで失敗しない実践法
基本を理解したら、次は実践です。ここでは、畑の状況や天候に合わせた「深さ」の調整方法や、生育ステージごとの「水やり」の具体的なタイミングなど、より上手に育てるための実践的なテクニックを紹介します。
栽培環境に合わせた植え付け深さの調整

じゃがいもの植え付けの深さは、浅すぎても深すぎてもいけません。基本的なルールを覚えつつ、ご自身の畑の土壌(特に水はけ)に合わせて調整することが上級者への近道です。
基本の「10-5-8ルール」
最も一般的な植え付け深さは、以下の通りです。
植え付け深さの基本 畝の中心に、深さ10cmほどの植え溝を掘ります。 その溝に、株間30cm間隔で種イモを置きます(切り口がある場合は下向きに)。 種イモの上に、5cm~8cmの土がかぶるように(=覆土)土を戻します。
この「覆土5~8cm」が、イモを植える「深さ」の目安となります。
深すぎ・浅すぎのデメリット
- 深すぎる場合 (覆土10cm以上): 地温が上がりにくく、発芽が遅れます。芽が地上に出るまでに力尽きたり、過湿で腐敗するリスクが高まります。
- 浅すぎる場合 (覆土5cm未満): 地表に近いため乾燥しやすくなります。また、イモが育ったときに土寄せが不十分だと、イモが地上に露出し、光が当たって緑化(後述)する原因になります。
水はけが悪い畑での応用 ご自身の畑が粘土質で水はけが悪い場合は、あえて植え付けを「浅め」(覆土5cm程度)にし、その分、畝を高く(15cm~20cm)設定します。こうすることで、種イモが水に浸かるのを防ぎ、腐敗のリスクを減らせます。
水やりのタイミングと量の目安

植え付け直後は水やり不要(畑の場合)ですが、発芽して生育が始まってからは、もちろん水が必要です。ただし、じゃがいもは基本的に乾燥気味の環境を好むため、水のやりすぎは禁物です。
水やりの基本は「土の表面が乾いたら、たっぷり与える」です。
特に水やりが重要になるのは、開花期です。じゃがいもは、花が咲き始める頃から、地中でイモが急速に大きくなり始めます。この時期に水分が不足すると、イモの数が減ったり、大きくならなかったりします。
生育ステージ別 水やりの目安(畑)
- 植え付け~発芽まで: 原則不要。
- 発芽~開花まで: 土が乾ききっていたら与える程度。乾燥気味に管理。
- 開花期(最重要): イモが肥大する時期。土の表面が乾いたら、朝夕の涼しい時間にたっぷり水を与える。
- 収穫1~2週間前: 水やりをストップする。土を乾燥させることで、イモが腐りにくく、保存性が高まります。
雨の日や乾燥時の水分管理の工夫

じゃがいも栽培は、天候に大きく左右されます。特に梅雨時期の長雨や、夏前の乾燥には注意が必要です。
雨が続く場合(梅雨など)
じゃがいもにとって最も危険なのが「過湿」です。雨が続く時期は、病気(特に疫病)が発生しやすくなります。 畝の間の通路(畝間)に水が溜まらないよう、排水口を掘るなど、水はけ対策を徹底してください。畝が崩れていないかもチェックしましょう。
乾燥が続く場合
開花期に乾燥が続くと、イモの肥大に深刻な影響が出ます。前述の通り、土の表面が乾いたら水やりを行いますが、日中の水やりは地温を急上昇させるため避けましょう。
乾燥対策の工夫 マルチをしていない場合は、株元に「敷きわら」や「刈草」を敷くことで、土の水分蒸発を防ぎ、地温の上昇を抑える効果が期待できます。
芽かきや土寄せと深さの関係

無事に発芽したら、次に行う重要な作業が「芽かき」と「土寄せ」です。これらは、植え付けの「深さ」とも密接に関係しています。
芽かき
種イモからは複数の芽が出てきますが、これを放置すると、養分が分散して小さなイモしかできません。そこで、丈夫な芽を2~3本だけ残し、他は引き抜く「芽かき」を行います。
- 時期: 芽が10cm~15cm程度に育った頃。
- 方法: 残す芽の株元をしっかり押さえ、引き抜く芽を根元からかき取ります。この時、種イモが動かないよう注意します。
土寄せ
「土寄せ」は、じゃがいも栽培で最も重要な作業の一つです。畝の脇の土を株元に寄せ集めます。
土寄せの最大の目的:緑化(ソラニン)防止 じゃがいもは、地中で大きくなったイモが地表に露出し、日光に当たると緑色に変色(緑化)します。この緑色部分には「ソラニン」という有毒な物質が含まれており、食中毒の原因となります。(参考:農林水産省:食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報)土寄せは、イモに光が当たるのを防ぎ、緑化を防ぐために必須の作業です。
また、株元に土を寄せることで、株が倒れるのを防ぐ効果や、除草の効果もあります。
- 1回目の土寄せ: 芽かきと同時に行う。株元に土を寄せます。
- 2回目の土寄せ: 1回目から2~3週間後、花が咲き始める前に行います。この時、イモが育つスペースを確保するように、畝を高く(かまぼこ型に)なるようしっかり土を寄せます。
前述の通り、植え付けを浅めにした場合は、特にこの土寄せをしっかり行い、イモが露出しないよう注意深く管理する必要があります。
じゃがいもの植え付け深さと水やりのまとめと成功のコツ
- じゃがいもの植え付けの深さは覆土5~8cmが目安
- 畑への植え付け直後の水やりは原則不要
- プランター栽培では植え付け直後にたっぷり水やり
- 水やりが不要な理由は種イモの腐敗を防ぐため
- 深植えしすぎると芽が出ない原因になる
- 浅植えはイモの緑化(ソラニン)リスクがある
- 芽出し(浴光催芽)は植え付け2~3週間前から行う
- 畝の作り方で最も重要なのは水はけ
- 2条植えの畝幅は110cm前後が目安
- マルチ栽培は土寄せ不要で雑草防止に役立つ
- 芽が出ない最大の原因は過湿による腐敗
- 生育中の水やりは開花期が最も重要
- 芽かきは丈夫な芽を2~3本残す
- 土寄せはイモの緑化防止と倒伏防止に必須
- 土壌が乾燥しすぎている場合は植え溝に湿し水を与える

