キッチンに置いておいたさつまいもから、いつの間にか芽が伸びていて驚いた経験はありませんか。「じゃがいもの芽には毒がある」と聞くため、さつまいもも同じように危険なのかと不安になりますよね。
実は、さつまいもの芽の毒に関する誤解と正しい知識を知れば、もう悩む必要はありません。じゃがいもの芽との違いは植物の分類にあり、さつまいもの芽は安全に食べることが可能です。
ただし、芽が出るとさつまいも本体の味が落ちる傾向があるため、見つけたら早めに調理するのがおすすめです。調理前に芽は根元から取り除くのが基本ですが、実はさつまいもの芽は栄養が豊富で食べられるのです。
芽は安全でも食べてはダメな芋の状態というものも存在するため、その見分け方も重要になります。この記事では、さつまいもの芽の毒より知りたい活用法と保存術を徹底解説。芽を食べるならアク抜きなどの下処理が必要ですが、さつまいもの芽をおいしく食べる活用レシピも紹介します。
また、発芽させないための保存方法として、基本は新聞紙に包んで常温保存、夏場は冷蔵庫の野菜室で保存するといったコツから、観葉植物として楽しむ水耕栽培の方法まで網羅しました。
さつまいもの芽の毒の心配より正しい知識を身につけ、食材を無駄なく美味しく活用しましょう。
- さつまいもの芽に毒がない科学的な理由
- 芽が出たさつまいもの味や、安全な処理方法
- 芽を美味しく食べるための下処理と簡単レシピ
- さつまいもを長持ちさせる季節ごとの正しい保存方法
さつまいもの芽の毒に関する誤解と正しい知識
- じゃがいもの芽との違いは植物の分類
- 芽が出るとさつまいも本体の味が落ちる
- 調理前に芽は根元から取り除くのが基本
- 芽は安全でも食べてはダメな芋の状態
- さつまいもの芽は栄養が豊富で食べられる
じゃがいもの芽との違いは植物の分類
「芋の芽には毒がある」というイメージは、主にじゃがいもが原因で広まっています。しかし、さつまいもの芽には毒性がないため、安心して食べられます。この違いを理解する鍵は、植物としての分類にあります。
じゃがいもとさつまいもは、見た目や用途が似ていますが、植物学的には全く異なる科に属しています。それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | さつまいも | じゃがいも |
---|---|---|
分類 | ヒルガオ科 | ナス科 |
食用部分 | 根(塊根) | 茎(塊茎) |
含まれる毒素 | なし | ソラニン、チャコニン(主に芽や緑変した皮) |
芽の安全性 | 安全に食べられる | 有毒(必ず取り除く必要あり) |
このように、じゃがいもが属するナス科の植物には、害虫などから身を守るための天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」が含まれていることがあります。これらを摂取すると、吐き気や腹痛といった食中毒の症状を引き起こす可能性があるため、じゃがいもの芽や緑色になった皮は必ず取り除かなければなりません。
一方で、さつまいもはアサガオと同じヒルガオ科の植物です。そのため、ソラニンなどの毒素は含まれておらず、芽だけでなく茎や葉も食べることができるのです(参考:農林水産省 aff(あふ):さつまいも・じゃがいも)。
ポイント
「芋の芽=毒」という考えは間違いです。毒性があるのは主にじゃがいもの芽であり、さつまいもや里芋、長芋などの芽には毒はありません。
芽が出るとさつまいも本体の味が落ちる
さつまいもの芽に毒性はありませんが、発芽したさつまいもには一つ注意点があります。それは、芋本体の味や品質が低下してしまうことです。
さつまいもは、芽を成長させるために、自身が蓄えている栄養分(デンプンや糖分)をエネルギーとして消費します。このため、芽が伸びれば伸びるほど、芋本体から栄養が奪われていきます。
具体的には、以下のような変化が起こり得ます。
- 甘みが減少する:糖分が消費され、本来の甘さが失われます。
- 食感が悪くなる:水分が失われ、パサパサしたり、筋っぽく感じられたりします。
- 風味が損なわれる:さつまいも特有の豊かな香りが弱くなります。
もちろん、少し芽が出たくらいで急に味がなくなるわけではありません。しかし、最も美味しい状態で食べるためには、芽が出始めたらなるべく早く調理するのがおすすめです。
芽が出ているのを見つけたら、「味が落ちる前触れ」と考えて、早めに食卓へ登場させてあげましょう!
調理前に芽は根元から取り除くのが基本
芽が出たさつまいもを調理する際は、基本的に芽の部分を取り除くことをおすすめします。芽自体は食べられますが、芋本体とは食感が異なり、料理の口当たりを損ねてしまうことがあるためです。
芽の取り除き方はとても簡単で、特別な道具は必要ありません。
簡単な芽の取り方
- 手で折り取る:小さく出始めたばかりの芽であれば、指でつまんでポキッと簡単に折り取れます。
- 包丁の根元でえぐる:少し根が張っている芽は、包丁のアゴ(根元の角の部分)を使って、芽の周りを少し大きめにえぐり取るようにすると綺麗に除去できます。
- ピーラーの芽取りを使う:ピーラーの横についている突起(芽取り)を使っても、簡単に取り除くことが可能です。
芽が複数箇所から出ている場合も、一つひとつ丁寧に取り除きましょう。毒性はないので、じゃがいものように神経質に、分厚く皮を剥く必要はありません。食感を良くするために、芽とその根元をスポット的に除去する、という認識で大丈夫です。
芽は安全でも食べてはダメな芋の状態
さつまいもの芽に毒がないことは繰り返しお伝えしていますが、芽の有無とは関係なく、さつまいも自体が傷んで食べられない状態になっている場合があります。こちらの方がはるかに重要ですので、調理前には必ずチェックしてください。
【危険】腐敗したさつまいもの見分け方
以下のサインが見られる場合は、残念ですが食べずに廃棄しましょう。
- 見た目:表面に黒や白のフワフワしたカビが生えている。皮にハリがなく、シワシワになっている。部分的に黒く変色し、汁が出ている。
- 触感:全体的、または部分的にブヨブヨと柔らかくなっている。触るとヌルっとした感触がある。
- 臭い:酸っぱい臭いやアルコールのような異臭、明らかな腐敗臭がする。
- 断面:切ってみて、中身に黒い斑点が広がっていたり、黒く変色してドロッとしていたりする。
特に、皮の一部が黒くなってブヨブヨしている場合は「軟腐病(なんぷびょう)」という病気の可能性があり、強い異臭を放ちます。このような状態のさつまいもは、絶対に食べないようにしてください(参考:農林水産省:食中毒予防のポイント)。
芽が出ていること自体は問題ありませんが、それと同時に腐敗が進んでいないかを確認する習慣をつけることが大切です。
さつまいもの芽は栄養が豊富で食べられる
取り除くのが基本とお伝えしたさつまいもの芽ですが、実は栄養価が高く、食べることができます。もし興味があれば、捨てずに活用してみるのも良いでしょう。
さつまいもの芽や、それが成長した「つる」の部分には、緑黄色野菜に引けを取らない栄養が含まれているという情報があります。特に、β-カロテンやビタミンC、ビタミンE、食物繊維などが豊富とされています(参考:文部科学省:食品成分データベース)。
スーパーなどで「芋づる」として販売されているのは、まさしくこの部分です。シャキシャキとした独特の食感が特徴で、きんぴらや炒め物にすると美味しくいただけます。
豆知識:芋づるとは?
一般的に食用として流通している「芋づる」は、葉や茎を食べるために品種改良されたさつまいものものです。家庭で伸びた芽も同じように食べられますが、芋づる専用の品種に比べると、少し筋が硬い場合があります。
もし芽を食べる場合は、次の章で紹介する適切な下処理を行ってから調理するようにしてください。
さつまいもの芽の毒より知りたい活用法と保存術
- 芽を食べるならアク抜きなどの下処理が必要
- さつまいもの芽をおいしく食べる活用レシピ
- 基本は新聞紙に包んで常温保存
- 夏場は冷蔵庫の野菜室で保存する
- 観葉植物として楽しむ水耕栽培の方法
- さつまいもの芽の毒の心配より正しい知識を
芽を食べるならアク抜きなどの下処理が必要
さつまいもの芽を美味しく食べるためには、調理前の下処理が非常に重要です。このひと手間を加えることで、アクによるえぐみや硬い筋が取り除かれ、格段に食べやすくなります。
基本的な下処理の手順は以下の通りです。
さつまいもの芽の下処理方法
- 筋(すじ)を取る
芽(つる)の根元を少し折り、フキの筋を取るように、スッと皮を剥くように引っ張ります。表面にある硬い筋を丁寧に取り除きましょう。 - 食べやすい長さに切る
調理したい料理に合わせて、3〜5cm程度の長さに切り揃えます。 - 水にさらしてアクを抜く
ボウルに水を張り、切った芽を5〜10分ほどさらします。これにより、さつまいも特有のアクが抜けて、変色を防ぎ、えぐみが和らぎます。 - 下茹でする
鍋にお湯を沸かし、塩をひとつまみ入れて1〜2分ほどサッと茹でます。茹で上がったら冷水に取り、水気をしっかりと絞れば下処理は完了です。
下処理のポイント
特に「筋取り」と「アク抜き」は、美味しさを左右する重要な工程です。この2つを丁寧に行うことで、シャキシャキとした食感を最大限に楽しむことができます。
下処理を済ませた芽は、さまざまな料理に活用できます。少し手間はかかりますが、食材を無駄なく使い切る楽しさがあります。
さつまいもの芽をおいしく食べる活用レシピ
下処理を済ませたさつまいもの芽は、独特の食感とほのかな風味が魅力です。ごはんが進む、簡単で美味しいレシピを2つご紹介します。
レシピ1:定番!シャキシャキ食感の「芋づるのきんぴら」
さつまいもの芽(芋づる)の最もポピュラーな食べ方です。甘辛い味付けがシャキシャキとした食感によく合います。
【材料】
- 下処理したさつまいもの芽:100g
- ごま油:大さじ1
- 醤油:大さじ1
- みりん:大さじ1
- 砂糖:小さじ1
- お好みで鷹の爪、白いりごま
【作り方】
- フライパンにごま油と鷹の爪を入れて熱し、さつまいもの芽を加えて中火で炒めます。
- 全体に油が回ったら、醤油、みりん、砂糖を加えて、汁気がなくなるまで炒め合わせます。
- 仕上げに白いりごまを振って完成です。
レシピ2:箸休めにぴったり「芋づるのマヨネーズ和え」
下茹でした芽を和えるだけの簡単副菜です。ほろ苦さとマヨネーズのコクが意外なほどマッチします。
【材料】
- 下処理したさつまいもの芽:80g
- マヨネーズ:大さじ1.5
- 醤油:少々
- すりごま:少々
【作り方】
- ボウルに全ての材料を入れ、よく和えるだけで完成です。
他にも、おひたしや天ぷら、味噌汁の具にしても美味しいですよ。普段とは違うさつまいもの一面を発見できるかもしれません。
基本は新聞紙に包んで常温保存
さつまいもの芽の発生を防ぎ、美味しさを長持ちさせるには、正しい方法で保存することが何よりも大切です。さつまいもは熱帯性の植物で寒さに弱いため、基本的には冷蔵庫に入れず、常温で保存します。
最適な保存方法は以下の通りです。
さつまいもの常温保存の手順
- 土は洗わない
購入した際に土が付いていても、洗わずにそのままにします。水分は腐敗の原因になるため、保存前に濡らすのは避けましょう。 - 1本ずつ新聞紙で包む
さつまいもを1本ずつ、優しく新聞紙で包みます。新聞紙が適度な湿度を保ち、乾燥を防いでくれます。 - 冷暗所で保管する
直射日光が当たらず、風通しの良い涼しい場所(13℃~15℃が理想)で保存します。段ボール箱に入れて保管するのもおすすめです。
保存場所の注意点
冬場でも、暖房の効いた暖かい部屋に置いておくのは避けましょう。さつまいもの発芽適温は20℃以上なので、暖かすぎるとすぐに芽が出てしまいます。
この方法であれば、品種や状態にもよりますが、1ヶ月以上は美味しく保存することが可能です。さつまいもは収穫後、少し時間を置くことで追熟し、甘みが増す性質があるため、正しい保存は美味しさを引き出す上でも重要です。
夏場は冷蔵庫の野菜室で保存する
前述の通り、さつまいもの保存は常温が基本ですが、例外があります。それは、室温が20℃を常に超えるような夏場です。
20℃以上の環境はさつまいもの発芽を促してしまうため、夏場はやむを得ず冷蔵庫で保存する必要があります。ただし、寒さに弱いさつまいもにとって、冷蔵庫は最適な環境とは言えません。
低温障害(低温によって品質が劣化する現象)を防ぎ、少しでも良い状態で保存するために、以下のポイントを守りましょう。
夏場の冷蔵保存のポイント
- 必ず「野菜室」に入れる
冷蔵室(約2〜6℃)よりも温度が高め(約3〜8℃)に設定されている野菜室を選びましょう。 - 新聞紙で包んでからポリ袋へ
常温保存と同様に、1本ずつ新聞紙で包んで乾燥を防ぎます。さらに、ポリ袋に入れて口を軽く縛ることで、冷気が直接当たるのを防ぎます。 - 早めに食べきる
冷蔵保存はあくまで一時的な対策です。低温障害によって味が落ちやすくなるため、1週間程度を目安に食べきるように心がけてください。
季節や室温に応じて保存方法を使い分けることが、さつまいもを最後まで美味しくいただくためのコツです。
観葉植物として楽しむ水耕栽培の方法
もし芽が出てしまったさつまいもを食べる予定がないなら、観葉植物として育てるという楽しみ方もあります。さつまいもは生命力が強く、水に浸けておくだけで簡単にかわいらしい葉を展開させます。
さつまいもの水耕栽培の始め方
- 容器を用意する
さつまいもの大きさに合った、ガラスのコップや瓶、プラスチック容器などを用意します。 - さつまいもを水に浸ける
さつまいもの下1/3程度が水に浸かるように容器に入れます。芽が出ている方を上にすると成長が早いです。 - 日当たりの良い場所に置く
日当たりの良い窓辺などに置きましょう。 - 毎日水を替える
水を清潔に保つため、毎日1回は必ず水を交換してください。これを怠ると水が腐り、芋が傷む原因になります。
育てる楽しみ
順調に育てば、数日で根が伸び始め、1〜2週間もすれば可愛らしいハート型の葉が次々と出てきます。つるが伸びてきたら、ハンギングにしたり、支柱に絡ませたりしてインテリアグリーンとして楽しむことができます。
食べるだけでなく、育ててみることで、さつまいもの生命力を身近に感じることができるかもしれません。お子様の自由研究などにもおすすめです。
さつまいもの芽の毒の心配より正しい知識を
この記事を通じて、さつまいもの芽に関する様々な情報をお届けしました。最後に、重要なポイントをリスト形式でまとめます。
- さつまいもの芽に毒はない
- 毒性があるのはじゃがいもの芽
- さつまいもとじゃがいもは植物の分類が異なる
- 芽が出ると本体の栄養が使われ味が落ちる
- 見つけたら早めに食べるのがおすすめ
- 調理の際は食感を良くするため芽を取り除く
- 芽よりもカビや腐敗、異臭に注意が必要
- ブヨブヨしたり酸っぱい臭いがしたら廃棄する
- 芽自体も栄養があり食べることができる
- 芽を食べる際は筋取りやアク抜きの下処理を行う
- きんぴらや天ぷらにすると美味しく食べられる
- 保存の基本は新聞紙に包んで常温の冷暗所
- 土は洗わずに保存する
- 夏場など暑い時期は野菜室で冷蔵保存する
- 観葉植物として水耕栽培で楽しむこともできる
「さつまいもの芽に毒があるのでは?」という心配は不要です。正しい知識を身につけ、食材の状態をしっかりと見極めることで、さつまいもを無駄なく、そして安全に美味しく楽しむことができます。