じゃがいもの中の黒い点・茶色の変色【原因と見分け方】

料理でじゃがいもを切った際、変色していたり、中に黒い点や茶色い部分があったりすると不安になりますよね。「これは腐っている？」「食べても大丈夫？」と疑問に思うかもしれません。

じゃがいもの変色や、中の黒い点、茶色い変色は、様々な原因で起こります。この記事では、それらの原因と、食べても安全かどうかの見分け方、そして正しい保存方法まで詳しく解説します。

そのじゃがいもは食べられる？危険な変色との見分け方

じゃがいもの変色に気づいた時、最も重要なのは「食べても安全か」です。変色には「生理障害」によるものと、「腐敗・毒素」による危険なものがあります。まずは状態を冷静にチェックしましょう。

食べられる可能性が高い変色（生理障害）

以下の特徴が見られる場合、生理障害の可能性が高いです。異臭やヌメリがなければ、変色部分をしっかり取り除くことで食べられます。

• 中の黒い点・茶色いシミ： 収穫時の打撲や、生育不良（中心空洞症）によるもの。
• 切った後の変色： 空気に触れたことによる「酸化（剥皮褐変）」。リンゴが茶色くなるのと同じです。
• 加熱後の黒ずみ： 茹でた後に黒っぽくなる「水煮黒変」。

すぐに捨てるべき変色（腐敗・毒素）

以下の特徴が一つでも当てはまる場合は、安全のために絶対に食べずに廃棄してください。

• 異臭がする： 酸っぱいニオイ、腐ったような強烈な悪臭がする。
• 手触りがおかしい： ヌルヌルする（ヌメリ）、ぶよぶよと柔らかい、汁が出ている。
• 緑色の皮： 皮や中身が緑色になっている。これは天然毒素「ソラニン」のサインです。
• ネバネバした汁： 切った断面（特に輪っか状の部分）からネバネバした汁が出る（輪腐病の疑い）。
• カビ： 白や黒のふわふわしたカビが生えている。

じゃがいも変色、中の黒い点や茶色の原因

じゃがいもの変色には様々な理由が考えられます。切った後の化学反応から、生育環境、病気まで、中の黒い点や茶色くなる原因を詳しく解説します。

切った後の酸化（剥皮褐変）

切ったじゃがいもをそのまま空気に触れさせておくと、切り口が茶色く変色します。これは「剥皮褐変（はくひかっぺん）」と呼ばれる現象です。

リンゴの切り口が茶色くなるのと同じ原理で、じゃがいもに含まれるポリフェノール類（チロシンなど）が、酸化酵素の働きによって空気中の酸素と反応し、メラニン色素を生成するために起こります。

変色はピンク色から始まり、次第に赤褐色、茶色、そして黒っぽい色へと変化していきます。この酸化による変色自体は、体に害を及ぼすものではありません。

中心空洞症や生育期の障害

じゃがいもの中心部が空洞になり、その周りが茶色や黒っぽく変色している場合、「中心空洞症（ちゅうしんくうどうしょう）」と呼ばれる生理障害の可能性があります。

これは、じゃがいもが育つ過程で、乾燥が続いた後に急に大雨が降るなどして急激に肥大した際に、中心部の成長が追いつかずに発生するとされています。病気や腐敗ではないため、空洞と変色している部分をスプーンなどでしっかり取り除けば、残りの部分は食べても問題ありません。

輪腐病など病気の可能性

じゃがいもの変色の中には、注意が必要な病気が原因の場合もあります。代表的なものが「輪腐病（わぐされびょう）」で、これは細菌による病気です。 （参考：病害虫・雑草の情報基地：輪腐病（わぐされびょう））

初期症状として、切った断面の維管束（いかんそく）と呼ばれる、デンプンなどを運ぶ管の部分が輪のように薄い黄色やクリーム色に変色します。進行すると、その部分が茶色から黒っぽく変色し、指で押すとネバネバした菌泥（きんでい）と呼ばれる汁が出るのが特徴です。

加熱で黒くなる水煮黒変とは

生のじゃがいもを切った時には特に異常がなかったのに、茹でたり蒸したりした後に、灰色や黒っぽく変色することがあります。これは「水煮黒変（みずにこくへん）」と呼ばれる現象です。

この変色は、じゃがいもに含まれるアミノ酸の一種（チロシン）と鉄分の量やバランスによって引き起こされます。特定の成分が多いじゃがいもを加熱することで、黒～暗緑色の色素が生成されるとされています。

見た目は良くありませんが、この変色による健康上の問題はないとされています。

【補足】品種による水煮黒変のしやすさ

「水煮黒変（加熱後の変色）」は、すべてのじゃがいもで等しく起こるわけではありません。

一般的に、「男爵薯（だんしゃくいも）」は、含まれる成分の特性から、「メークイン」に比べて水煮黒変が起こりやすい品種であるとされています。栽培された土壌の条件によっても発生のしやすさは変わります。

じゃがいも変色、中の黒い点や茶色の対処法

変色したじゃがいもを見つけたとき、どう対処すればよいのでしょうか。ここでは、安全に食べるための除去方法から、変色を防ぐ正しい保存方法、そして万が一変色してしまった場合の調理の工夫まで、具体的な対処法をご紹介します。

安全な変色部分の取り除き方

腐敗や毒素（緑化）のサインがなく、中心空洞症などの生理障害による変色だと判断できる場合は、変色部分を適切に取り除くことで食べられます。

変色部分は味が落ちていたり、食感が悪かったりすることが多いため、美味しく食べるためにも除去しましょう。

1. 包丁の角やピーラーの先端（芽取り部分）、またはスプーンを使います。
2. 黒い点、茶色いシミなど、変色している部分を、その周囲も含めて少し大きめにえぐり取るようにします。
3. 中心空洞症の場合は、空洞の周囲の変色している部分を全て取り除きます。

変色を防ぐ正しい保存温度と場所

じゃがいもの変色、特に「緑化（ソラニンの発生）」や「腐敗」を防ぐための最も重要な対策は、正しい場所で保存することです。

基本は「冷暗所」での常温保存

じゃがいもの保存に適した温度は7℃～15℃程度とされています。光が当たると緑化（毒素）の原因になり、湿度が高すぎると腐敗の原因になります。

• 場所：光が当たらず、風通しの良い涼しい場所（冷暗所）。キッチンの床下収納や、北側の涼しい部屋などが適しています。
• 方法：ダンボール箱や紙袋に入れて保存します。じゃがいもは呼吸しているため、ポリ袋などに入れると湿気がこもり、腐敗の原因になります。新聞紙で一つずつくるむと、湿気を適度に調節し長持ちしやすくなります。

夏場など、やむを得ず冷蔵庫に入れる場合

室温が20℃を大きく超える夏場は、常温保存では逆に腐敗や発芽（緑化）が進みやすくなります。この場合に限り、冷蔵庫の「野菜室」（冷蔵室よりも温度が高め）を活用します。

切った後は水や酢水にさらす

酸化（剥皮褐変）による変色を防ぐには、切ったじゃがいもをすぐに水にさらすのが最も効果的です。水にさらすことで、じゃがいもの切り口が空気に直接触れるのを防ぎ、酸化酵素の働きを抑えることができます。

• ボウルに張った水に、切ったそばからじゃがいもを入れていきます。
• さらす時間は5～10分程度が目安です。長時間さらしすぎると、ビタミンCなどの水溶性の栄養素が流出してしまう可能性があります。

前述の通り、水煮黒変（加熱後の変色）も防ぎたい場合は、水に少量の酢を加えた「酢水」にさらすのも有効です。

変色が目立たない調理アイデア

中心空洞症などで、変色部分をしっかり取り除いたものの、残りの部分もなんとなく色が悪い、または見た目が気になる場合もあるかもしれません。その際は、じゃがいもの形が残らない料理に活用するのがおすすめです。

潰したり、煮込んだりすることで、見た目の問題が解消され、食材を無駄なく使い切ることができます。

じゃがいもの変色に関する「よくある質問（FAQ）」

最後に、じゃがいもの変色に関して多く寄せられる疑問についてお答えします。

Q. 変色した部分、栄養価はどうなりますか？

A. 酸化による変色自体が、栄養価を著しく低下させることはないとされています。ただし、切った後に水にさらしすぎると、ビタミンCなどの水溶性の栄養素が流れ出てしまいます。変色部分を取り除いた後は、長時間水にさらさないようにしましょう。

Q. 離乳食や子供に食べさせても大丈夫？

A. 酸化や中心空洞症など、生理障害による変色部分を完全に取り除けば、残りの部分は食べても問題ないとされています。

ただし、乳幼児は体がデリケートです。少しでも腐敗（異臭・ヌメリ）が疑われる場合や、緑化（ソラニン）の可能性がある場合は、絶対に与えないでください。判断に迷う場合は、安全のために大人が食べるか、廃棄することをおすすめします。（参考：厚生労働省：授乳・離乳の支援ガイド（食品の安全な取り扱い））

じゃがいも変色、中の黒い点や茶色の総括

じゃがいもの変色は、酸化や生育不良など様々な原因で起こります。危険な腐敗や毒素（ソラニン）との違いを見極め、正しく対処・保存することが重要です。

変色の見極めと対策のポイントまとめ