家庭菜園のじゃがいも害虫対策|農薬の安全な使い方と無農薬防除テクニック

じゃがいもの害虫は農薬で防ぐ!おすすめの種類と使い方を徹底解説 家庭菜園

家庭菜園でじゃがいもを育てる際、避けては通れないのが「害虫」との戦いです。「大切に育てた葉に突然穴が開いている」「順調だったはずの茎が折れている」といった被害に直面し、途方に暮れた経験はないでしょうか。

被害に気づいても、どの農薬を使えばいいのか、そもそも家庭菜園で農薬を使っても安全なのか、不安に感じる方は非常に多いです。

実は、じゃがいもの害虫対策は、虫が大量発生してからの「対症療法」だけでは不十分なケースが多くあります。プロの農家が実践しているように、植え付け時の「予防」と、発生した症状に合わせた「適切な薬剤選び」こそが、失敗しないための黄金ルールです。

この記事では、初心者でも迷わずに実践できるよう、具体的な手順を網羅的に解説します。

  • 葉の穴や変色などの「症状」から、今すぐ対処すべき害虫の正体を即座に特定できる
  • 植え付けから収穫までの「栽培カレンダー」に沿った、無駄のない農薬散布のタイミングが分かる
  • 農薬の効果を最大化するための「展着剤」の使い方や、芋の中を食い荒らす「ジャガイモガ」対策を知れる
  • 「虫食い芋は食べられる?」などのよくある疑問を解消し、安全基準を守って栽培を楽しめる

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じゃがいもの害虫農薬対策で重要な種類の特定

効果的な対策を行うためには、まず戦うべき「敵」を知る必要があります。しかし、初心者の方にとって、動き回る虫の姿を一瞬見ただけで名前を特定するのは難しいものです。

そこで、虫そのものを探す前に、まずはじゃがいもに現れた「被害の症状」から原因を突き止めるアプローチが有効です。その後に、各害虫の詳細な特徴と具体的な対策を確認していきましょう。

症状から犯人を特定!逆引きチェックリスト

症状から犯人を特定!逆引きチェックリスト

畑で異変を見つけた際、どのような症状が出ているか冷静に観察してください。以下のリストと照らし合わせることで、対処すべき害虫の目安がつき、無駄な農薬散布を防ぐことができます。

症状(被害の様子) 疑われる害虫 緊急度
葉が網目状(レース状)にスカスカになっている テントウムシダマシ
葉が縮れている・丸まっている・モザイク模様がある アブラムシ(ウイルス病) 高(抜き取り処分)
苗が根元からポッキリ折れている ネキリムシ
夜間に葉が丸坊主になるほど食べられている ヨトウムシ
収穫した芋の中に虫が入っている・穴がある ジャガイモガ・針金虫
株全体の育ちが悪く、下葉が黄色く枯れる ジャガイモシストセンチュウ 高(土壌汚染)

じゃがいもの害虫の種類と特徴

じゃがいもの害虫の種類と特徴

症状からある程度の予測がついたら、実際に害虫を探してみましょう。じゃがいもに付く害虫の多くは、鳥などの天敵から身を守るために、葉の裏や株元の土の中に隠れています。漫然と眺めるのではなく、ポイントを絞って観察することが早期発見のコツです。

探す時のポイント

  • 葉の裏:アブラムシは新芽や葉の裏にびっしりと張り付いています。また、テントウムシダマシの卵(黄色い縦長の卵が20〜30個固まっているもの)がないかもチェックします。
  • 株元の土:昼間姿が見えないのに食害がある場合は、株元の土を1〜2cm軽く掘ってみてください。丸まったヨトウムシやネキリムシが出てくることが頻繁にあります。

ウイルス病の原因となるアブラムシの対策

ウイルス病の原因となるアブラムシの対策

じゃがいも栽培で最も警戒すべき害虫は、実は葉を食べる虫ではなく、このアブラムシです。体長数ミリの小さな虫ですが、群生して植物の養分を吸うだけでなく、治療法のないウイルス病(モザイク病や葉巻病など)を媒介するためです。

一度ウイルス病に感染すると、葉が縮れて光合成ができなくなり、生育が止まってしまいます。さらに深刻なのは、その株から採れた芋を翌年の種芋にすると、病気が次世代にも引き継がれてしまう点です。

アブラムシは繁殖力が非常に強く、短期間で爆発的に増えます。飛来を防ぐために、植え付け時に光を反射するシルバーマルチを使用したり、発生初期に農薬で徹底的に叩いたりすることが重要です。農林水産省の資料でも、アブラムシの防除はウイルス病予防の観点から極めて重要視されています。

葉を食害するテントウムシダマシの防除法

葉を食害するテントウムシダマシの防除法

テントウムシダマシ(正式名称:ニジュウヤホシテントウなど)は、一見すると益虫のテントウムシに似ていますが、背中に28個もの細かい黒い星があり、全体に産毛が生えていてツヤがないのが特徴です。

成虫も幼虫もナス科の植物が大好きで、葉の柔らかい部分を削り取るように食べます。結果として、葉脈だけが残った網目状(レース状)の無残な姿になります。放置すると葉が枯れてしまい、芋を太らせるための栄養が作れなくなります。

動きが比較的遅いため、数が少ないうちは見つけ次第捕殺するのも有効です。しかし、近くにナスやトマトを植えている場合、そちらにも移動して被害を広げるため、菜園全体での注意が必要です。

夜行性で厄介なヨトウムシやネキリムシ

夜行性で厄介なヨトウムシやネキリムシ

「夜盗虫」の名を持つヨトウムシや、茎を地際で噛み切って苗を倒すネキリムシは、日中は土の中に潜んでいるため発見が遅れがちです。「朝起きたら苗が倒れていた」「一晩で葉がボロボロになった」という被害は、これらの害虫によるケースが大半です。

特にネキリムシは、植え付け直後の柔らかい茎を好んで狙います。たった一匹のネキリムシが、一晩で数株の苗をダメにすることもあり、被害は甚大です。発生してからの対処よりも、植え付け時に土壌に薬剤を混ぜておく「予防」が最も確実な対策となります。

土壌に被害を及ぼすジャガイモシストセンチュウ

土壌に被害を及ぼすジャガイモシストセンチュウ

肉眼ではほとんど見えない微小な害虫、ジャガイモシストセンチュウにも注意が必要です。彼らは土壌中に生息し、じゃがいもの根に侵入して養分を奪います。被害を受けた株は、水不足のような症状を示して生育不良を起こし、収穫量が激減します。

最大の問題は、一度畑に侵入すると卵を含んだ殻(シスト)が土の中で長期間生存し、根絶が極めて困難になることです。外部から汚染された土を持ち込まないようにすることや、センチュウに抵抗性を持つ品種(「キタアカリ」や「インカのめざめ」など)を選ぶことが主な対策となります。農林水産省の植物防疫所でも、移動規制を含めた厳重な管理が呼びかけられている重要害虫です。(参考:農林水産省:ジャガイモシストセンチュウの解説

芋の中を食い荒らすジャガイモガに注意

芋の中を食い荒らすジャガイモガに注意

葉だけでなく、土の中の「芋(塊茎)」そのものを食害する害虫として「ジャガイモガ」がいます。幼虫は葉に潜ることもありますが、茎の中を通って地下の芋に到達したり、乾燥してひび割れた土の隙間から侵入したりして、芋の中をトンネル状に食い荒らします。

収穫後の保管中も注意

ジャガイモガの恐ろしい点は、収穫後の保管中にも繁殖し続けることです。気づいたら保管していた芋が全滅していた、ということもあり得ます。対策としては、栽培中にしっかりと「土寄せ」をして芋を露出させないこと、収穫後は速やかに涼しい暗所に保管することが大切です。

じゃがいもの害虫に効く農薬の選び方と使い方

害虫の正体がわかったら、次は「いつ」「どの農薬」を使うかです。農薬はタイミングを間違えると効果が半減するだけでなく、収穫までの日数制限などの安全性の問題も生じます。ここでは栽培の時系列に沿った選び方を解説します。

栽培カレンダーで見る農薬散布のタイミング

じゃがいもの生育ステージに合わせて、最適な農薬のタイプは変わります。以下のカレンダーを参考に、計画的な防除を行いましょう。

時期 生育ステージ 主な対象害虫 推奨される対策
3月〜4月 植え付け時 アブラムシ ネキリムシ 【予防】粒剤の混和 (オルトラン粒剤など)
4月〜5月 芽かき・成長期 アブラムシ ヨトウムシ 【観察】早期発見 シルバーマルチ等の物理防除
5月〜6月 開花・肥大期 テントウムシダマシ ジャガイモガ 【駆除】液剤・スプレー散布 (スミチオン乳剤など)
収穫前 黄変期 全般 【停止】使用期限の確認 農薬使用を止め、手で捕殺

植え付け時の予防に最適なオルトラン粒剤

植え付け時の予防に最適なオルトラン粒剤

カレンダーにある通り、最初にして最大の防御が「植え付け時の粒剤処理」です。家庭菜園で最もポピュラーな「オルトラン粒剤」(参考:住友化学園芸:家庭園芸用GFオルトラン粒剤)などの浸透移行性殺虫剤を土に混ぜることで、有効成分が根から吸収され、植物全体が「虫が嫌がる味」になります。

これにより、発芽直後の柔らかい葉を狙うアブラムシや、茎を狙うネキリムシの被害を自動的に防ぐことができます。効果が長期間(数週間程度)持続するため、週末しか畑に行けない家庭菜園ユーザーには特におすすめです。種芋を植える溝にパラパラとまくだけなので、手間もほとんどかかりません。

発生後の駆除におすすめの農薬と展着剤の活用

発生後の駆除におすすめの農薬と展着剤の活用

予防をしていても、効果が切れた頃に害虫が発生することや、飛来してくるテントウムシダマシなどが付くことがあります。その場合は、即効性のある液体農薬(スミチオン乳剤など)や、そのまま使えるスプレー剤(ベニカXなど)を使用します。

ここでプロからの重要なアドバイスがあります。それは「展着剤(てんちゃくざい)」の活用です。

展着剤とは?

じゃがいもの葉や害虫の体は、ワックス層があり水を弾きやすい性質があります。農薬を水で薄める際、「ダイン」などの展着剤を数滴混ぜることで、表面張力が下がり、薬液が糊のように葉にピタッと張り付きます。これにより、殺虫効果が格段に安定し、雨で薬剤が流れるのも防いでくれます。

収穫前の農薬使用時期と回数に関する注意点

収穫前の農薬使用時期と回数に関する注意点

農薬を使用する際は、必ず製品ラベルに記載された「使用基準」を守らなければなりません。特に注意すべきは「収穫前日数(使用時期)」と「使用回数」です。

例えば「収穫7日前まで」と記載されている場合、収穫予定日の1週間前からは使用できません。これは、食べる時点での残留農薬を国が定めた基準値以下にするための必須ルールです。安全に食べるためにも、収穫日が近づいたら農薬の使用を控え、テデトール(手で取る)などの物理的防除に切り替えましょう。農薬の適正使用については、農林水産省のガイドラインでも強く推奨されています。(出典:農林水産省:農薬の適正使用について

農薬を使わない無農薬栽培での害虫対策

農薬を使わない無農薬栽培での害虫対策

「できるだけ農薬は使いたくない」「有機栽培に挑戦したい」という方は、農薬に頼らない複数の防除方法を組み合わせる「総合的害虫管理(IPM)」(参考:農林水産省:総合的病害虫・雑草管理(IPM)の実践)の考え方が必要です。

  • コンパニオンプランツ:マリーゴールドやネギ類をじゃがいもの株間に混植することで、独特の香りが害虫を遠ざける効果が期待できます。
  • 木酢液・ニームオイル:これらは殺虫剤ではありませんが、定期的に散布することで害虫が寄り付きにくい環境を作ります(予防効果)。300〜500倍程度に薄めて週に1回程度散布するのが一般的です。
  • 防虫ネット:植え付け直後からトンネル支柱を使って隙間なくネットを張り、物理的に害虫の侵入を遮断します。裾をしっかりと土で埋めることが成功のポイントです。

害虫農薬に関するよくある質問Q&A

最後に、じゃがいもの害虫と農薬に関してよく寄せられる質問をまとめました。疑問を解消して、安心して栽培に取り組みましょう。

Q. 虫に食われたじゃがいもは食べても大丈夫ですか?
A. 葉が食われただけであれば、収穫した芋自体には全く問題ありません。芋自体が虫(ジャガイモガやコガネムシ幼虫)にかじられている場合、傷んだ部分を大きく取り除けば食べることは可能ですが、腐敗が進んでいる場合や変色が激しい場合は、食中毒のリスクを避けるため廃棄してください。
Q. 農薬の使用期限(収穫前日数)を誤って過ぎて使ってしまいました。
A. 残念ながら、安全基準を超えて農薬が残留している可能性があるため、そのじゃがいもは食用にはしないでください。非常にもったいないですが、家族の健康と安全が第一です。
Q. オルトランは植え付け時以外にも使えますか?
A. 植え付け後でも、株元にばら撒いて土寄せすることで使用可能な場合があります。ただし、収穫までの日数が十分に残っているか(例:収穫45日前まで等)を必ずラベルで確認してください。生育後半の使用は収穫前日数に抵触しやすいため注意が必要です。

じゃがいもの害虫被害を防ぐ農薬活用のまとめ

じゃがいも栽培における害虫対策について、症状の見極めから農薬の活用法、安全ルールまで解説しました。記事の要点を整理します。

  • まずは葉や茎の症状(穴、変色、倒伏)から害虫の種類を特定する
  • アブラムシはウイルス病を媒介するため、発見次第すぐに対処する
  • テントウムシダマシは葉を網目状にし、ジャガイモガは芋の中を食害する
  • 植え付け時にオルトラン粒剤を使うのが最も効率的な予防策である
  • 発生後の駆除にはスミチオン乳剤などが有効で、展着剤を混ぜると効果が増す
  • 栽培カレンダーを意識し、収穫前日数を厳守して農薬散布をストップする
  • 無農薬栽培では防虫ネットやコンパニオンプランツを併用する
  • 虫食いの芋は程度によるが、農薬使用ルールを守っていない芋は食べない
  • 適切な農薬使用は、安全で美味しいじゃがいもを安定して収穫するための技術である
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